プレス加工技術
現場の経験に基づくものが多いため、当社ではここでなるべく多くの技術情報を公開します。
1-1.打ち抜き(Blanking / Punching)
■ 定義
金属板から所定形状の製品または穴を打ち抜く加工。プレス加工の最も基本的な操作。
ブランキング:外形を切り出す。
パンチング:穴を開ける。
■ 原理
パンチとダイの間に板材を挟み、強制せん断によって材料を分離。材料は塑性変形 → 弾性変形 → せん断 → 破断の順に進行。
■ 使用設備・工具
プレス機(C型・門型・順送プレスなど)
打ち抜き金型(パンチ・ダイ)
ストリッパープレート(材料を保持してパンチ抜き後に戻す役割)
材料送り装置(順送の場合)
■ 標準手順
材料準備:コイル材または板材を平坦にセット。
位置決め:パイロットピンやストッパーで位置を正確に合わせる。
打ち抜き:パンチが降下 → ダイと干渉 → せん断。
排出:製品は搬送、スクラップはシュートで回収。
寸法確認:穴径、外径、バリ高さをチェック。
■ 管理ポイント
クリアランス:板厚の5~10%程度が標準。
バリ高さ:基準以上の場合は金型研磨が必要。
穴位置精度:±0.05mm程度を目安。
■ よくある不良と対策
バリ大 → クリアランス過大、刃先摩耗。
かえり(反り) → 板厚が薄い/排出不良。
穴の楕円化 → 金型摩耗、材料の送り不良。
■ 安全上の注意
ストリッパーが正常に機能しているか確認。
手送り作業は禁止、必ず送り装置を使用。
スクラップ飛散に注意しガードを設置。
1-2.せん断(Shearing)
■ 定義
直線的な切断加工。シャーリングマシンを使い、板を指定寸法に裁断。
■ 原理
上下の刃で材料を押し切り、板厚方向にせん断破壊を発生させる。
■ 使用設備・工具
シャーリングマシン(機械式/油圧式)
バックゲージ(寸法設定装置)
定盤、ゲージブロック
■ 標準手順
材料を定盤にセット。
バックゲージで寸法を合わせる。
上刃を作動させ切断。
切断材を取り出し、寸法確認。
■ 管理ポイント
切断幅公差:±0.1~0.2mm程度。
せん断面:90°直角性を確保。
刃先摩耗:切断面粗れや段差に直結。
■ よくある不良と対策
面粗れ → 刃の摩耗 → 刃研磨・交換。
寸法誤差 → ゲージ設定不良 → 再調整。
■ 安全上の注意
手を刃物に近づけない。
板の跳ね返りや倒れに注意。
ゴーグル・手袋必須。
1-3.絞り成形(Deep Drawing)
■ 定義
平板を引き込み、円筒や角筒形状にする加工。容器製造に多用。
■ 原理
パンチが板材を押し込み、板が塑性流動して側壁を形成する。
■ 使用設備・工具
絞り用金型(パンチ・ダイ・ブランクホルダー)
潤滑剤(油・グリース)
プレス機(大トン数タイプ推奨)
■ 標準手順
ブランク材をダイにセット。
ブランクホルダーで板材を押さえる。
パンチで引き込み。
製品を取り出す。
■ 管理ポイント
板厚減少率:20%以内が目安。
ホルダー圧:均一な材料流入のため調整必須。
潤滑:しわ・割れ防止。
■ よくある不良と対策
割れ → 材料が伸びすぎ、R小さすぎ → R拡大・潤滑改善。
しわ → ホルダー圧不足 → 荷重増加。
厚みムラ → 金型形状不良。
■ 安全上の注意
高荷重加工のため金型破損に注意。
潤滑油の飛散防止対策を取る。
1-4.曲げ(Bending)
■ 定義
金属板を所定角度に変形。V曲げ、U曲げ、エアベンド、コイニングなど方式がある。
■ 原理
外側は引張変形、内側は圧縮変形 → 弾性戻り(スプリングバック)が発生。
■ 使用設備・工具
ベンダープレス
曲げ金型(Vダイ、パンチ)
角度測定ゲージ
■ 標準手順
材料を金型に位置決め。
パンチ降下 → 板をダイに押し付け曲げる。
スプリングバックを補正して角度調整。
製品を取り出し、角度確認。
■ 管理ポイント
最小曲げR:板厚の1倍以上が推奨。
スプリングバック補正:2~5°余分に曲げる。
割れ防止:圧延方向に直角に曲げる。
■ よくある不良と対策
割れ → 曲げR不足 → 金型修正。
角度不良 → スプリングバック大 → 補正角度調整。
■ 安全上の注意
指を挟みやすい工程。ハンドレス操作必須。
角度ゲージ確認時は機械停止。
1-5.接合(Joining)
■ 定義
プレス荷重を利用して部品を固定・結合する方法。リベットかしめ、インサートナット圧入、タッピングなどが該当。
■ 原理
塑性変形または圧入によって、部材同士を固定する。
■ 使用設備・工具
プレス機
リベット、かしめ工具、ナットインサート工具
トルクレンチ(接合強度確認用)
■ 標準手順
部材とリベット・ナット等をセット。
プレスで加圧し固定。
接合強度を検査。
■ 管理ポイント
加圧力:不足すると緩み、多すぎると母材破損。
位置精度:穴芯ズレを防止。
■ よくある不良と対策
緩み → 加圧不足 → 荷重増加。
破損 → 過剰荷重 → 荷重低減。
■ 安全上の注意
手差し作業禁止。
接合後の鋭利部での怪我に注意。
まとめ(教育用ポイント)
打ち抜き:クリアランス管理が命。
せん断:刃先状態と寸法管理。
絞り:割れ・しわを潤滑とホルダー圧で制御。
曲げ:スプリングバックと割れに注意。
接合:加圧力と位置精度の管理が必須。