5.金型材料
当社で使用する金型は下型がダイス鋼・上型がSKS鋼を使用する。
鋼材
具体的な合金工具鋼としては様々な種類があり、炭素工具鋼にニッケル、クロム、モリブデンなど合金元素を添加することで、焼入れ、耐摩耗性、耐衝撃性、耐熱性能を。炭素量や合金元素の種類と含有量によって、切削用、冷間金型用、熱間金型用など、様々な用途に適した特性が与えられる。
焼入れ性の向上:合金元素によって、炭素工具鋼よりも低い温度で焼入れが可能になり、また、冷却速度を緩やかにすることで、より均一な硬度分布を得られる。
耐摩耗性の向上:クロム、タングステン、バナジウムなどの合金元素が、炭化物として存在することで、表面硬度を向上させ、摩耗抵抗を向上させる。
耐衝撃性の向上:ニッケルやモリブデンなどの合金元素が、靭性を向上させ、衝撃に強い構造を形成する。
耐熱性の向上:クロム、バナジウム、タングステンなどの合金元素が、高温での強度保持を助け、熱疲労抵抗を向上させる。
用途の多様性:切削工具、冷間金型、熱間金型、耐衝撃工具など、幅広い用途に対応できる。
合金工具鋼の主な用途:
- 切削工具:ドリル、フライス、刃物など。
- 冷間金型:金型、ゲージ、ダイスなど。
- 熱間金型:プレス型、ダイカスト型、押し出しダイスなど。
- 耐衝撃工具:ハンマー、ポンチ、たがねなど。
- その他:刃物、工具、精密部品など。
合金工具鋼の種類 (例):
SKT (Steel Kogu Temperature):熱間金型用、高温での強度保持、耐熱疲労性に優れる。
SKS (Steel Kogu Special):切削工具、冷間金型用など、汎用的な用途に用いられる。
SKD (Steel Kogu Dice):冷間金型用、耐摩耗性、硬度、焼入れ性に優れる。
その他:
- 合金工具鋼は、適切な熱処理(焼入れ、焼き戻し、サブゼロ処理など)を施すことで、より優れた性能を発揮可能。
- 各種の合金元素の組み合わせによって、異なる特性を持つ合金工具鋼が存在する。
焼入れ処理
当社では熱処理は自社で行っていませんが、400度指定でお願いをしている。
焼入れすると鉄が硬くなるのは、鉄の組織が急冷によって変化し、炭素原子が鉄原子の間に均等に閉じ込められ結合し、セメンタイト(Fe3C)という硬い化合物ができるためである。
また、炭素の存在は焼入れ自体を行うために必要不可欠となる。
炭素の役割:
炭素は鉄の硬さを増すだけでなく、熱処理による硬化を可能にする。炭素の存在が熱処理の鍵となるため、鉄鋼材料の硬さを調整するには炭素の含有量を変えることが重要。
鉄を加熱するとフェライトと呼ばれる組織からオーステナイトと呼ばれる組織へ変化し、その状態から急速に冷やすと、炭素原子が逃げ場を失い、マルテンサイトと呼ばれる硬い組織に変化する。
1. セメンタイトの形成:鉄と炭素は結合してセメンタイトという化合物を作る。このセメンタイトが鉄の硬さや強度を高める役割を果たす.
2. 焼入れの仕組み:鉄と炭素は熱処理によってさらに硬化する。鉄を加熱すると、炭素が鉄の結晶構造に溶け込み、その後急速に冷却すると、硬い組織(マルテンサイト)が形成される。このマルテンサイトが鉄を硬くする。
3. 炭素と硬さの関係:炭素量が多いほど、鉄の硬度や引張強さは高まる。しかし、炭素量が多いと伸びが小さくなり、脆くなる性質も強まる。
詳細な説明:
- 1. 鉄の組織の変化:鉄は常温では、フェライトと呼ばれる組織構造(体心立方格子)を持っています。この状態では、炭素原子は鉄原子の間の隙間に少し入っている程度です。しかし、鉄をある温度まで加熱すると、フェライトからオーステナイトと呼ばれる組織構造(面心立方格子)へと変化します。この状態では、炭素原子が鉄原子の間の隙間に多く入るようになり、均一に分布します。
- 2. 急冷によるマルテンサイトへの変化:オーステナイトの状態から急速に冷やすと、炭素原子が鉄原子の間に逃げ場を失い、マルテンサイトと呼ばれる組織構造に変化します。マルテンサイトは、オーステナイトの状態からそのまま固まった状態とイメージすると分かりやすいです。
- 3. 硬さの増加:マルテンサイトは、フェライトやオーステナイトよりも非常に硬い組織構造です。そのため、焼入れによって鉄をマルテンサイトに変化させると、鉄の硬度が増加します。
焼入れまとめ:
焼入れ(熱処理の一種)によって、鋼材の硬度を高めることができる。焼入れでは、鋼材を高温で加熱し、その後急冷させることで、結晶構造が変化し、硬度が増す。具体的には、鉄の組織を硬いマルテンサイトへと変化させ、硬さを高める。このプロセスにおいて、炭素原子が鉄原子の間に閉じ込められることが、硬さ増加の鍵。
炭素含有量が多いほど、焼入れ後の硬度が高くなる。
焼入れの特徴と硬度:
- 硬度向上:焼入れは、鋼材の硬度を向上させる効果があります。これは、焼入れによって結晶構造がマルテンサイトに変化するため。
- 炭素量と硬度:鋼材に含まれる炭素の量が多いほど、焼入れ後の硬度は高くなります。一般的に、炭素量0.6%程度までは炭素量が多いほど硬度が増加します.
- 焼入れ温度と硬度:焼入れ温度も硬度に影響を与えます。一般的に、焼入れ温度が高いほど硬度が高くなる傾向がある。
- 冷却方法と硬度:冷却方法(水冷、油冷、空気冷など)も硬度に影響します。急冷(水冷など)の方が、マルテンサイト組織を形成しやすく、硬度が高くなる。
- 焼戻しと硬度:焼入れ後に焼戻し(再加熱)を行うと、靭性(粘り強さ)を向上させることができます。しかし、焼戻しは硬度を低下させる傾向があります.
- 硬度の測定:硬度の測定には、ブリネル硬さ試験(HBW)、ロックウェル硬さ試験(HRC)、ビッカース硬さ試験(HV)などがある。
焼入れの具体的な例:
- S45C:JIS規格のS45C鋼材は、焼入れによって硬度を向上させることができます。焼入れ後の硬度は、HRC55~62程度。
- SKD11:冷間金型用鋼材であるSKD11は、焼入れによって高硬度となり、耐摩耗性に優れます。焼入れ後の硬度は、HRC62-64程度。
焼入れの注意点:
- 脆さ:焼入れ後の鋼材は、硬度が高くなる一方で、脆くなる傾向があります。そのため、焼入れ後には、焼戻しなどの熱処理で靭性を確保することが重要です.
- 変形:焼入れによって、鋼材が変形することがあり、形状の複雑な部品や大型の部品では、変形に注意が必要。
- 材料の種類:鋼材の種類によって、最適な焼入れ条件が異なります。焼入れの際には、材料の特性を考慮する必要。
ブリネル硬さ試験(HBW):
- 圧子:鋼球(材質や直径によってHB, HBS, HBWと表記が変わります)。
- 測定方法:鋼球を試料に押し付けて圧痕を作り、その直径を測定して硬さを算出。
- 特徴:大きな圧痕を形成するため、平均的な硬さを測定するのに適している。
- 用途:大型部品や鋳鉄など、硬さが均一な材料の硬さ測定に適す。
ロックウェル硬さ試験(HRC):
- 圧子:超硬合金球または円錐状のダイヤモンド圧子(スケールによって圧子の形状が異なります)。
- 測定方法:圧子を試料に押し付けて圧痕を作り、その深さを測定して硬さを算出します。
- 特徴:迅速かつ効率的に硬さを測定できるため、製造現場での品質管理に適しています。
- 用途:鋼やアルミニウム合金など、比較的硬い材料の硬さ測定に適す。
- スケール:HRC (Cスケール)、HRB (Bスケール)、HRA (Aスケール)などがあり、材料の種類や硬さによって使い分ける。
ビッカース硬さ試験(HV):
- 圧子:ダイヤモンドの角錐形圧子。
- 測定方法:圧子を試料に押し付けて圧痕を作り、その対角線の長さを測定して硬さを算出。
- 特徴:小さい圧痕を形成するため、表面硬さや薄い材料、脆い材料の硬さ測定に適す。
- 用途:表面硬化層や被膜、溶接材などの断面の硬さ分布測定、宝石の硬度測定など、精密な硬さ測定が必要な場合に用いられる。