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※本記事は「技術解説編」です。先に公開したユーモア中心の「おちゃらけ版」とは若干時系列が異なるため、シリーズでお読みいただくと理解が深まるかと思います。
■日本では標準でも、世界ではほぼ見向きもされていないLINE
日ごろからITを使わない職人でも、LINEは使用しています。
その「ITに詳しくない人でも使っている」というのがLINEの最大のメリットなのですが、実は制約も多く利便性が低く使いにくい一面があります。
早速その利便性の低さから壁にぶつかりました。

■LINEはやはり業務には向かない
LINEは1ユーザー1端末という原則があります。
パソコンやタブレットでは通信できない、端末がないと過去の会話の履歴も追えない。(一部可能なサービスはあり)
つまり、スマホが手元にないと情報が入手できない。──これは1分1秒を争う業務では致命傷ともいえる弱点です。
■LINEビジネスも業務利用の限界を超えられない
LINEは確かに個人間のコミュニケーションツールとして日本国内では圧倒的な普及率を誇っています。SNSというよりも「電話やメールの代替」として根付いており、LINE公式アカウント(旧LINE@)やLINE WORKSといった業務向けサービスも展開されています。
しかし、これらはいずれも元のアーキテクチャが「スマホ対スマホの会話」を前提としているため、業務用途として使用するにはいくつかの根本的な制約が立ちはだかります。
■業務用ツールとの致命的な違い
(1)データの一元管理が不可能
SlackやMicrosoft Teams、Google Chatなどの業務用ツールと比較すると、LINEはサーバー上のログ管理やアカウント管理機能が著しく貧弱です。LINE Botなどの外部連携を通じてログ取得は可能ですが、これはあくまで開発者側で“無理やり”構築した仕組みであり、LINE本体に公式なAPIとしての「全会話ログへのアクセス」「クラウド履歴の提供」といった仕組みは存在しません。
(2)端末依存設計の限界
LINEは、基本的に『スマートフォンを持つこと』を前提に設計されており、1ユーザー=1端末という制約が存在します。たとえば、スマホを忘れたり、故障した場合、そのユーザーはLINEにログインすらできず、業務情報から完全に切り離されてしまいます。パソコン版LINEは存在しますが、スマホのLINEが“母艦”であり、スマホがなければPC版も使えません。
(3)マルチユーザー・共通端末運用に不向き
例えば、工場内で共通タブレットを設置し、全員が業務用アカウントを使ってメッセージをやり取りするという設計は、SlackやGoogle Chatでは当たり前にできます。しかしLINEでは、ログインごとに電話番号認証やSMS認証が必要になるため、共通端末で複数アカウントを運用するのが非常に困難です。
■LINE Bot設計も限界が近い
LINE Botを使った勤怠管理、写真の保存、社内の情報検索などを実装してきましたが、LINEそのものの構造が業務用ではないため、以下のような問題が頻出します:
– Botから送れるメッセージの形式や回数に制限がある(Reply APIとPush APIの違い)
– グループトークと個別トークで挙動が異なる
– スタンプ、画像、音声などの処理に追加実装が必要
– APIに「誰が既読か」などの情報が一切渡ってこない
これらを一つ一つカスタム対応することで、それなりの業務用ツールとして成立はするのですが、「最初から業務用に設計されたシステム」と比べると構造的に不利であることは否めません。
■「職人向けのとっかかりにLINEは最適」だが…
LINEは確かに、ITに不慣れな職人でも使えるという面で、大きな武器になります。しかしそれはあくまで「業務IT化の入り口」であり、LINEの中にすべてを閉じ込めてしまうと、やがて「使いにくさ」「融通の利かなさ」「運用の破綻」に直面します。
今後、LINEは「職人とAIや社内システムをつなぐインターフェース」として残しつつ、バックエンドはすべてGoogle Chatか、もしくは社内Webツールで構成するハイブリッド構成にすることを考え始めました。
しかし、それなりの品質を担保するにはそれなりの維持費がかかります。コストは最大の悩みどころです。
LINEという「最も普及した非業務ツール」をベースとしながら、その限界を見据え、次のフェーズへの進化を想定したいと思います。
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