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※本記事は「技術解説編」です。先に公開したユーモア中心の「おちゃらけ版」とは若干時系列が異なるため、シリーズでお読みいただくと理解が深まるかと思います。
■ソフトウェアの段階的リリースと設計思想

試験的に導入していた社内AIアシスタント「LINE愛子Bot」が、いよいよ実運用フェーズを開始しました。
まずは、現場の職人たちが日常的に行っている「社内情報の検索・問い合わせ」を、AIを介して機械的に行う仕組みからの導入です。
「AIに聞く? そんなの人に聞いた方が早いだろ」
と思われるでしょう。
しかし、こうした“ちょっとした質問”が、現場の生産性に大きな影響を与えているのです。
■「質問する」という行為の本当のコスト
見落とされがちなのが、「人に質問する」という行為が2人分の時間を同時に消費しているという事実です。
質問した本人は「1分聞いただけ」と思っていても、答える側も同じ1分を費やしています。
つまり、質問1回=2分の労働損失。これが何十回と積み重なって、非常に大きな時間的ロスになっています。
特に、私たちのような少人数で運営している町工場では、こうした数分のロスが生産性全体を左右するレベルの問題になります。
加えて、新規事業や技術継承においては、「同じ説明を何度も師匠が繰り返す」という構図も避けたいところです。
2人×説明回数=大きな損失。“説明する時間そのものを削減する”仕組みづくりが必要なのです。
■まずは「従業員情報」と「取引先情報」から
こうした背景のもと、愛子Botの第一歩として整備したのが、以下の2つの社内情報です。
-従業員情報(氏名、役職、呼び名、電話番号、住所など)
-取引先情報(会社名、代表者、住所、電話番号、主な取引内容など)
これらの情報はGoogleスプレッドシートに一元管理し、LINE上で自然言語による質問を受け取った愛子Botが、リアルタイムに検索し、適切な形で即時回答を行えるようにしました。
OpenAIはこういった情報を渡すことを拒否するため、仕組みを入れるのは苦労しました。
また、検索言語の正規化も検討しなければなりません。
たとえば:
「山さんの連絡先教えて」
といった曖昧な質問に対しても、「山本さん」か「山田さん」か「山岸商事」かを文脈や過去のやり取りから推測し、最適な連絡先を返す仕組みです。
■「すぐに答えが返ってくる」体験が生産性を変える
こうした即時回答の仕組みは、「探す」「聞く」「答える」といったすべての工程を短縮し、人が“つい誰かに聞いてしまう”文化を少しずつ変えていく必要があります。
愛子は、社内に散在していた情報を見える化し、LINE上でいつでも・誰でもアクセスできるようにすることで、「人に聞くのが当たり前」だった環境から、「まずは愛子に聞く」文化へと現場を変えていきます。
■AIも新人。だから人間の協力も不可欠です
もちろん、愛子Botはまだ成長途中の“新人社員”です。
人間の新入社員も1か月で全ての情報を応えられるほど成長したりはしません。そのためすぐには全ての質問に完璧に答えられるわけではありません。
「名前のゆれ」や「略称」「方言的な表現」など、AIにとって難しい問い方もあります。
そのため、現時点では 「〇〇の△△」と表現する/誤字やカタカナを避けるといった、人間側のちょっとした工夫も必要です。
でもこれは、AIの導入における“初期教育期間”のようなもの。
しかし、人間側とAIが一緒に育っていくプロセスを楽しむ気持ちがあれば、決して難しいことではありません。
■これは電話帳の代替ではない、未来への第一歩
LINE愛子Botは単なる連絡帳検索ツールではありません。今後は以下のような領域へと、機能を広げていく予定です:
-社内ノウハウの蓄積と検索対応
-技術の継承と教育サポート
-現場の作業補助やトラブル対応ナビゲーション
そのすべての始まりとして、「従業員情報」と「取引先情報」をAIに任せてみる、という小さな一歩です。
ここはまだスタート地点。愛子の本当の成長は、これからが本番です。

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