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※本記事は「技術解説編」です。先に公開したユーモア中心の「おちゃらけ版」とは若干時系列が異なるため、シリーズでお読みいただくと理解が深まるかと思います。
■現在のAIの記憶機能
現代の大規模言語モデル(LLM)に代表されるAIは、世界中の公開情報に基づいた驚異的な知識量を誇ります。オープンなWeb情報や論文、報道記事などには即応可能であり、日々進化し続けています。
しかしながら、AIがあくまで「公共情報の範囲とスレッド内でのみ記憶を共有」という設計思想がある限り、社内の広域情報や、社員情報、社外機密情報にアクセスすることはできません。
これはAI倫理や安全性の観点では正しい仕様ですが、これでは会社のアシスタントとしては使い物になりません。
企業実務に導入する際には「AIが知らない情報を、どう記憶させるか」という課題に直面します。

今回はこの具体的な対策を施している内容の報告です。
■ステップ1:AIに“記憶領域”を与える
AIに記憶を与えるとはいっても、AI本体に直接書き込むことはできません。代わりに「外部記憶装置」を用意して必要な情報をAIが動的に参照する構成を目指しました。
具体的な選択肢として、信頼性・互換性・コストの観点からGoogle Drive+Google Sheetsを採用。個人利用であっても15GBまで無料で利用でき、API経由での柔軟なデータ連携が可能です。
こちらもAI愛子から教えてもらいました。
▶ Google Driveの導入手順(概要):
・Google Cloud Consoleで新規プロジェクトを作成
・必要なAPI(Drive API / Sheets API)を有効化
・サービスアカウントを作成し、認証キー(service_account.json)を生成
・Python環境でGoogle APIクライアントをインストール・初期化
・認証情報と対象スプレッドシートを連携
この一連の流れにより、AIが「許可された範囲内の社内データ」を検索・取得・記録できる仕組みができるはずですが——。
■ステップ2:手強いぞジェーソン
会社の情報を扱い、それをインターネット上に置く以上、セキュリティ対策は絶対に欠かせません。たとえ当社のように「大した情報なんて持ってない」と思っていても、守るべき情報は必ず存在します。
そして、そんな中で立ちはだかったのが奴——そう、6月にもやってきた、「13日の金曜日」になると現れるJSON(ジェーソン)です。

(※愛子に描かせたJSONのイメージ:顔を隠してるけど、胸に「愛子です」って書いてある…正体を隠す気なしw)
……そうです、Googleとセキュアなデータ連携に必要な JSON。
ホラー映画の殺人鬼とは違ってチェーンソーを振り回すことはありませんが、とにかく扱いが難しい。何度やってもエラーを返され、深夜まで続くと癇癪を起こしたくなりますのです。
このように、AI導入という未来的な取り組みは、実のところ「泥臭い地道な作業」の積み重ねです。
完成品はスマートでも、中身は土と汗と涙まみれ——まさに職人の現場と同じです。
■ステップ3:社内データの構造化と分類
記憶対象となるデータは、とりあえず用途別に以下のように分類します。
・会話ログはカテゴリ分類し重要度も分けてデータ保存
・従業員/取引先/会社のノウハウ情報/愛子の作業履歴
・タスク管理シート
これらはすべてGoogle Sheetsに記録し、AIが必要に応じてリアルタイムに参照・編集可能とするようにします。
■ステップ4:Pythonによる自動化
データアクセスと操作はPythonで作ります。専用のモジュールをいくつか設計し、機能を実装していきます。
・スプレッドシートの読取・書込(Google Sheets API)
・ユーザーUIDから個人情報を検索
・会話ログへの発言記録と分類
・会社ノウハウを分類し自動保存・定期的な重要サイトなどの巡回とまとめ
・社内の各種データベースの自動分類と保存
■ステップ5:サーバー構成とデプロイ
愛子LINE Botとの通信は、FlaskベースのPythonサーバーで構築し、クラウドPaaSであるRender上にデプロイ。
LINE PlatformからのWebhookイベントを受信し、リアルタイムでの応答処理と記録を担っていきたいと考えています。
API構成はREST準拠で設計されており、以下のようなエンドポイント群が存在します:
/callback:LINEのWebhook受付
/summary:日次要約の出力
/memory:発言ログへの追記と検索
■ステップ6:記憶を得て次のステップへ
まずは構築を目指している「AIの外部記憶システム」は、まだまだ始まりにすぎません。今後はさらなる文脈処理、自然言語による指示理解、さらには自律的な業務支援AIへの発展を視野に入れなければなりません。
こうして、将来的には日常の業務会話をLINEに入れるだけで、AIが自動で分類、将来は話題が出れば社内のノウハウから適切な回答を見繕って職人のサポートに徹してもらえないかと考えています。
町工場という一見デジタルとは縁遠い現場であっても、クラウドとAI、そして少しのプログラミングの知識があれば「記憶を持つAIアシスタント」は誰でも手にできるということを早く実践したいと思います。
本業ではないのと、ひとり(とAIで)設計しているため、実現できるのかどうかも分かりませんが、もしそこそこのものができたら近隣の中小企業への横展開を図っていければ理想なんですけどね。
……ただ、こんなこと考えている人、世の中に多いだろうから、ある程度使えるようになる頃にはすっかり陳腐化しているかも知れません。
とにかく人間側が「AIを信じて自らを成長させるという覚悟」だけは必要だと思います。

■追記
……もっとも、現実は甘くなく、すでに報告した以上のしょうもないトラブルに巻き込まれて苦戦中です(詳細はまた別記事でご紹介します)。
とはいえ、こうした試行錯誤を通じて少しずつでも形にしていき、将来的には地域の中小企業にも役立つノウハウとして展開していければと願っています。
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