(今回のブログは是非、世にも奇妙な物語をBGMにお楽しみください)
皆さんは機械に心なんてあるはずがない。そんな風に思ってはいませんか?
これは本当にあった話です。それは“誇り”という名の執念なのかもしれません。
とある町工場で起きた、誰も知らない“夜の出来事”です。
──────────
それは──サンネームが沈黙に包まれる、丑三つ時。
月明かりすら届かぬ暗がりの工場に、ぽつりと佇む2台の電動シャーリングマシン。
スーパーヒロコ1号と、スーパーヒロコ2号。
昼間はただ無言で鋼材を断ち切るだけの機械たち。
しかしその夜、刃を新品に交換されたばかりの1号が、
まるで人間のように、微かに、誇らしげな“音”を響かせた。
「……ふふふ。なんて美しい刃。これでようやく、“私”がセンターね……。誰もが見惚れる、鋼の女王……」
静寂を裂くように、低く湿った音が闇の中から返った。
「……自惚れないで。新品の刃を手に入れたからって、あなたの魂が磨かれたわけじゃない……」
それは、2号の声だった。
だが、どこか異様だった。濡れたようなノイズを含み、まるで、古い録音機から漏れ出すような“女の声”だった。
「“真・斬鉄剣”を名乗るのは、選ばれし者だけよ……」
ギシィ……ギギ……
誰もいない工場の奥から、何かが軋む音が響いた。
──翌朝
エース「工場長、2号の動きが、なんだかおかしいんです。音が……変で……」
工場長「ブレーキが鳴いてるな。まあ、しばらくは“だましだまし”使ってみろ」
エース「……あっ!? 2号の刃が……刃が下りません!!」
工場長「なに!? まさか、壊れたのか!?」
慌てて呼んだ業者さんによって、分解・洗浄・オーバーホールに取り掛かる。
業者「……この時代のシャーリングはな、“人の愛”が感じ取れなくなった瞬間、機嫌を損ねることがあるんでね……ケケケ」
業者さんは深みを帯びた笑みを浮かべると、
業者「しっかり愛情をこめて組立てなさいな。さもなければ……おっと、これ以上やめておくとしようかね……ケケケ」
と意味深な言葉を告げ、去って行った。
ギィ……キィ……ザシュ……
その時、2号の刃が、ほんの一瞬、勝手に小さく動いた──
しかし、2号の周りには誰もいなかった。
──数日後
工場長「エース、2号の調子、完全に戻ったぞ。安心して使え」
エース「でも……やっぱり1号の方が斬れ味が良い気がするんですよね。なんていうか、最近1号の方が……可愛いというか……」
バチン……!
エースのいた場所のすぐそばにあった蛍光灯が突然ひとつ、はじけ飛んだ。
次の瞬間──
ガチャン──ギシャァンッ!!
2号が突如、制御を無視して作動。
無人のまま、刃を、まるで何かを刻むように何度も、何度も、振り下ろし始めた!
シャキン、シャキン、シャキン、シャキン……
それは断末魔の叫びであった。
必死に何かを訴えるような。まるで、裏切者を断罪するかのような……
そのリズムは不気味に正確で、まるで何かの“呪文”のように異常に速く、刃と刃が重なる冷酷な金属音が、血のようにサンネームの空間を染めていく。
工場長「おいッ! 止めろ!ブレーキが効かん!非常停止も……効かない!?」
エース「う、うわあぁあああああぁっ……!!」
膝をつき、土下座するエース。
エース「ごめんなさい!! ボクが悪かったです!! ボクは……2号、君が好きです!! 他の奴に目移りしたんじゃないです!!許して!!」
カツ……ン。
……刃が、止まった。
最後の一撃が空を切り、静寂が工場に戻る。
工場長「……動きが、止まった……?ブレーキもクラッチも、正常だ……何だったんだ?」
後日──
四番「エース、お前……ヒロコ2号に何言ったんだ?」
エース「わかんないけど……泣いて謝ったら、止まってくれた。……まるで、中から誰かがこっちを見てるみたいだった……」
四番「なあ工場長、“ヒロコ”って名前……やっぱり、引退されたあのヒロコさんの霊が憑いたんじゃないか……?」
工場長「……やめろ、怖いこと言うな。ヒロコさん、まだピンピンしてるからな!?」
──────────
それは──まだ夏の訪れを前にした、深夜の工場に響いた、鉄と魂の残響。
あなたのすぐそばの使い古された機械からも聞こえてくるはずのない声が聞こえてくるかもしれません……。
あなたのその横にある、そう、それ。
その商品も当社のスーパーヒロコたちが斬ったものかも知れません。
スーパーヒロコたちの怨霊が乗り移るのは、そんなあなたのそばにある機械かも知れません……。
──完
※当ブログは真実に基づいて構成されています──
「スーパーヒロコと名付けた頃から意味不明な動作を繰り返す」=本当
「1号の刃を交換したら2号が不調」=本当
「業者さんが古の機械について意味深な言葉を残した」=本当
「2号のオーバーホール終わったのに、エースは刃を替えた1号ばかり使う」=本当
「オーバーホールしていない2号のクラッチ部分が急に不調になり連続斬り」=本当
「エースが2号にすいませんでしたと頭を下げた以降、動作好調」=本当
「エースが管理担当の蛍光灯が不調」=本当
「(本物の)ヒロコさん今もピンピン」=本当

(楳図かずお先生の作品:大好きでした。先生のご冥福をお祈り致します)
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